
具体的なsk-ii セルミネーションのこと
通信販売とは、商品の現物を見せない、触らせないで売るビジネスだ。
商品をコトバと写真に置き換えて売るわけだから、その気になれば、粗悪品を一流品のように語ったり見せたりもできる。
買う側から言うと、通信販売で商品を買うという行為は、「見えない商品を、見えない売り手のコトバだけで信用する行為になるから」、「そんなの、とんでもない詰」と身ぶるいする消費者が多かった。
加えて、戦前の通信販売は商品を見せないどころか代金も前払いだった。
返品も認めなかった。
先に代金をもらわなければ商品は届けないよ。
届けたらもう返品は認めないからね。
売り手が買い手を信用しないのだから、買い手が売り手を信用しないのは当り前だった。
「先に商品を送ったら、代金を踏み倒されるのではないか」
「先に代金を払ったら、ふところに入れてドロンされるんじゃないか」
この相互不信が、戦前の通信販売を日蔭のビジネス、うさん臭いビジネスにとじこめていた。
年配の人ならおぼえておいでだろうか。
戦前どころか、一九六〇年代までの通信販売といえば、大衆雑誌や芸能雑誌の片隅にひっそりとたたずむこんな商品が主流だった。
健康痩身剤、をやめる薬、ちょっと恥ずかしくてお店では買いにくいよという、いわば日蔭商品。
恥ずかしい、こっそり、が戦前から六〇年代までの通信販売のイメージだった。
ガスライターのヒットで知られるマルマンの片山豊社長だ。
「動くデパート」という秀抜なキャッチフレーズを武器に大々的にカタログ販売にのり出したが、見事にずっこけた。
1冊でやめてしまったのだから、よほど反応がなかったんだろうね。
当時の朝日新聞はその失敗をこんなふうに分析している。
大掴みに言って、誤算は二つあったのではなかろうか。
まず、日本の消費者心理を買いかぶったこと。
カウンセラーたちはいう。
「お客は、品物を自分の目で見て、手でさわらなくて.は、どうしても承知しない。
いくら、カタログで説明してもダメだった」。
これが最大の壁だった、という。
評論家上坂冬子さんの見方だと「とくに、主婦は恋人を選ぶ思いで買物をする。
だから、あっちから突っつき、こっちからこねくりまわさないと、買う決心がつかない」。
それと、デパートに行くのは、買う楽しみより、プラつく楽しみが大きい。
別世界のような、あのきらびやかな空気にひたると、夫婦げんかのウサも発散する。
デパートは、まだまだ、レクリエーションの場でもある。
こうして「動くデパート」は行きづまった。
だが、片山社長は「あれは歴史の進化に沿った考え方だ」と、いまも強気である。
十年先をいったのだが、金が続かなくなったので、撤退したにすぎない、というのである。
日本の消費者には目で見ることも手でふれることもできない買い物なんて向いていないよ。
アメリカと違って近くにお店がなくてしじゅう不便しているわけでもないしね。
それに女性にとっての買い物はエンターテインメントなのに、商品を印刷しただけのカタログがどうしてエンターテインメントになるの?
これが六〇年代までのわが国の大方の通信販売観だった。
マルマンの失敗はその証明のはずだった。
ところがいまはどうだろう、猫も杓子も通信販売だ。
カタログショッピングを中心に、新聞雑誌通販、ダイレクトメール(DM)、折込み通販、テレビ通販、ラジオ通販、ネット通販を遺して、あらゆる商品が販売されている。
通販専門会社やデパートはもちろん、化粧品会社、旅行会社、航空会社、生命保険会社、各地の海産物問屋、ミカン農家、梅農家、お菓子屋、ハム・ソーセージ屋、秋田のきりたんば工場までが、われもわれもと代金あと払いの通信販売を兄も知らぬ他人相手に展開している。
消費者側もあっけらかんと兄も知らぬ会社に申込んでくるから、2002年度の通販業界売上げはなんとまあターニングポイントはマルマンの片山社長が予感した通り、「十年先」の七〇年代だった。
七と写真だけで触ることのできない商品」が、「触ることのできる商品」と肩を並べて信用されるようになっていった。
一体、七〇年代になにが起ったのか。
人々はなぜ、手のひらを返したように、「コトバと写真だけの商品」を買うようになったのか。
それって、ちょっとした買い物の革命ではなかったか。
「今日の消費者と消費社会にとって、通信販売は有益な小売のかたちである」と信じている。
家に居ながら買い物ができるといった他愛のない利便性レベルではなくて、今日の消費社会に必要とされる新しい小売の可能性がまだまだ通信販売には隠されていると思うからだ。
たとえば通信販売は、同じような商品があふれていてどれを選んだらいいのか途方に暮れている消費者にとっての水先案内人的役割を果たせると私は確信している。
あるいは、通信販売に出違ったことで私は、「通販企業は自己表現できる」という確信をもつことができた。
明治時代のカタログは「舶来品の情報誌」だった。
七〇年代、「商品情報好きの消費者」が大量出現した。
私の会社が出している『通販生活』というカタログは、半分が商品販売のページ、あとの半分は一般雑誌と同じ読み物ページという構成になっているので、よく、『通販生活』を知らない人のためにかんたんに自己紹介させていただくと、「商品ページ」と比べると、商品説明文(コピー)が3~5倍はあるから、1号当りの通信販売商品は少なくて100点前後しか掲載しない。
「読み物ページ」はまあ、普通の月刊誌と同じようなものと思ってください。
しいて特徴をあげると、読者参加の企画が多いこと。
いちばん人気の「国民投票企画」は論者で投票し、翌号でその結果を発表する。
けっこう政治的関心の高い読者が多い。
その他、読者投稿の連載企画が8本、チェルノブイリ被ばく者とドイツ平和村の子どもたちへのカンパをよびかける連載企画が2本ある。
もう1つ、普通のカタログと異なるところは1冊180円の有料であることだ。
無料では届けない。
それでもこの10年間くらいは常時130万人前後の定期購読者を維持している。
外国ではこんな形式の有料カタログはまず見当らないところから、「すごいアイディアでしたね」なんて、ときどき誉めてくれる人もいる。
こそばゆい。
「読み物つき」も「有料化」も、実は私のアイディアではなかったからだ。
早い話が、『通販生活』とそっくり同じ形式のカタログ雑誌はすでに明治時代に存在していた。
輸入雑貨の多い『通販生活』とよく似ている品揃えだ。
もう一方の読み物はというと、巻頭記事は「廿世紀的賓業」で、文明開化とは「進歩せる学術」を現実に応用することなのに空論をもてあそぶ連中ばかりで怪しからんという文章。
米国のエジソン博士を例にして実業の大切さを説いている。
つづいて、内村鑑三の「豊年は来た、吾等は軍人と政治家とに歎されて豊年を濫用して戦争を起してはならない」という反戦コラム。
これも、憲法9条擁護を主張している『通販生活』に共通するね。
「健康」特集では冷水浴の効用、消化と栄養、喫煙十則、リウマチスの妙薬がとり上げられている。
「家庭」特集もあって、松村松年という人が欧州と日本の家庭比較論を語っている。
「酔飴浸言」「眠獅魔放語」「質店のいろいろ」といったユーモア記事まで掲載されていて、ますます『通販生活』に近い雰囲気。
実際に徴収したかどうかは不明だが、ちゃんと定価もついている。
1部5銭で送料は5厘。
ちなみに当時出ていた競合カタログは無料だったから、定価はついていない。
毎月1回10日発行で、この号が28冊目。
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